ジュリー・アンドリュース自伝を読んだ。
アメリカでは2008年に出版されていてベストセラーになっていたものを、日本語訳が最近発売になりすぐに買ったのだが、やっと読了。
子供の頃大好きだった映画「サウンド・オブ・ミュージック」と「メリー・ポピンズ」で見た映像以外、何の知識もないジュリー・アンドリュースという人がどういう人なのか、この歳になってからやっと少し分かるなんて、おばさんになるまで生きていてよかったというものだ。
1935年生まれ。
第二次世界大戦中に子供時代を過ごし、ロンドンでドイツ軍から何度も空襲を受け地下鉄や地下壕に避難したり、両親は離婚して母親についていったが父親が大好きで、その父親を実父だと信じて疑わなかったけれど、実は実父は全く別の人だと言うことを後で知ったり。そして、母親は実父ではない別の男性と結婚してその男性が継父となるが、継父から性虐待を受けそうになったり。
舞台演奏などで身を立てる母親と継父が、次第にアルコールに溺れて行って、一家の家計を一手に支えるのは10代の頃からジュリー・アンドリュースだったり。
なんか、すごく苦労している人だということが分かった。戦争や貧しさというのは、この時代の人は皆程度の差はあれ経験しているのだろうが。
マリア先生もメリー・ポピンズも、美人で優しい感じなのはもちろんなのだけど、どこかひょうきんだったりシュールだったり昔の映画とは思えないようなちょっと不真面目な面白さを感じたのだけど、それはこの大変な人生から来る深みなのかなと思った。昔の人は人間の深みが違う。
イギリスでのミュージカルを認められ、ブロードウェイに渡り、マイ・フェア・レディで一気にスターになる。
マイ・フェア・レディはオードリー・ヘップバーンではなく、ジュリー・アンドリュースこそが本来映画でもイライザを演じるべきだった、という話は有名だけれど、著書で舞台での日々が細かく描写されているのを読むと、ジュリー・アンドリュースのマイ・フェア・レディの舞台、ほんの少しでもいいから見たかったな〜と思う。昔のことだから映像は残っていないらしい。もったいない。
他にも有名な俳優のエピソードがたくさん出てきて興奮した。(ローレンス・オリヴィエとか)
一番興奮したのは、ウォルト・ディズニーにディズニーランドを案内してもらっているところ。す、すご…。
自伝と言うより、戦時下のイギリスや戦後のイギリスやアメリカでの舞台の様子を知る、歴史物語のような本だった。
歴史物語と言えば、ジュリーアンドリュースの親世代の人たちは、わりと皆自分で普通に色々作っているエピソードが出てくる。
例えばお父さんが椅子を作ったり、お母さんなんかピアニストとして生計立ててる人なのに、普通に舞台で着るドレスを仕立てたりしている。
現代でドレスを自力で仕立てられたら超特殊技能だけど、昔はそこまですごいことでもなかったのかもしれないと思った。
便利さと引き換えに、現代人が失った技術はわりと最近まで存在していたのかも。
そして、本はウォルト・ディズニーからメリー・ポピンズのオファーを受けるところまでで、映画の話はまだ出てこないが、後半に続く。後半読みたい。早く出て。
子供の頃ただただ大好きだった俳優や映画や音楽や物語などが、一体どのような活き活きとした実体だったのか。歴史の中でどんな位置づけだったのか。少しでも分かるとなんだか自分の人生も腑に落ちるような満足感がじんわりと広がる。
後半早く読みたい。