竹細工の練習をしたくて、竹を使えるところを探して、人づてにたどり着いたここ、さいたま市の塚本郷。
去年の秋は何度かこちらで竹を取らせてもらっていたのですが、花が咲きましたという知らせをしばらく前に聞いてから、気がつけばその竹林はすっかり枯れてしまったのです。
枯れたあと竹林は再生するのか、枯れた竹は切ったほうがよいのか、いろいろ分からない中、今回専門家が来てくれるというイベントがあり参加してきました。ハチクや竹全般の生態について分からなかったことがたくさんわかりました。
竹の開花周期
竹って、何十年かに一度いっせいに花を咲かせて枯れる、というのは有名な話ですが。
ハチクの開花周期は120年だそうです。前回は1908年という記録が残っているそうなので、今回はだいたい全国的に昨年から開花が始まったそうなので、ちょっと早いですね。
ちなみに真竹は60年周期で前回の開花は1960年代、ちょうど高度成長期で竹製品はプラスチック製品に置き換わっている時代だったので、枯れてもしょうがないよね〜という感じで過ぎていったもよう。
そして孟宗竹。こちらは約300年前に中国からやってきて以来まだ開花したことがないのだそう。まだ開花時期が来ていないのか、そもそも花が咲いて枯れるタイプの竹ではないのか、謎だそうです。へえ〜!!
そしてハチクと真竹の花は咲いても種子をつけないのですが、孟宗竹の花には種子があるそうです。
左が孟宗竹の種子。まいてちゃんと管理していれば竹になるらしい。
ハチクはどのように復活するか
そして専門家の方は、枯れてしまったハチクは復活するのかという核心について詳しく教えてくださいました。
花が咲くとハチクの葉は落ち、稈も茶色くなり枯れていく。けれどもこんなちっちゃなハチクの赤ちゃんが生えてきて、やがて笹のようになっていく。花は種子をつけない。
この笹のような再生竹は、最初から立派な竹にはならない。やがてこの再生竹もしばらくすると枯れてしまうんだけど、翌年にはもう少し太い再生竹が生え、その翌年にはもっと太いのが生え…。と何年か繰り返すと、やがて元のようないわゆる竹になるタケノコが生えてくるのだそうです。
こちらは、竹を取らせてもらっている竹林からもう少し離れた別のハチクの竹林。茶色いのが枯れて葉も落ちたハチク。手前の緑が再生竹。笹よりも少し背が高いし立派なので枯れてから2年目に入っているのではないかとのこと。
竹林はだいたい10年で元の姿に戻ります。とのこと。
復活のためにするべきこと
ちゃんともとに戻ると聞いて、すごくうれしかったです。
これまで枯れた竹林を見てきて、枯れた竹が邪魔で新しい竹が生えるスペースがないのではないか、笹みたいな小さな葉っぱはどう見ても大きくなっても竹にならなそうだけど、普通のハチクとこの笹みたいのはどういう関係になっているのだろう、、とずっと分からなかったので、今回お話を聞けてすごくすっきりしました。
つまり、これから竹林再生のためにやったらよいこととは。
笹のような小さな再生竹がほかの植物との競争に負けないように、再生竹以外の雑草などは除去する。
枯れた竹は伐採して、再生竹を残す。
といったことをやってあげると早く竹林が復活してくれるそうです。
竹についての知識
竹について、他にもたくさん教えていただきました。こちら、ハチクの花とすごく似ているけれど花ではなく病気の「てんぐ巣病」。カビの一種が原因で枝が異常に分岐してしまう病気らしいです。
実際に開花ではなくてんぐ巣病にかかっていた付近のハチク。花ではないので全体的には枯れずに緑の葉っぱも残っているのが開花と違うところ。(でも、花が咲いてかつてんぐ巣病にかかっていることもあるので、そういう場合はかなり見分けが難しいそうです)
その他、今回120年周期よりも少し短いけれども、温暖化の影響などあるのか聞いてみましたが、竹の体内時計で開花は決まっていると言われているので、そういった外部の影響は受けないと言われていますとのこと。
体内時計!すごいですよね。どうやって120年とか数えているんだろう。
そして、竹は竹細工から家の建材、農業での道具そして食料などなど本当に生活のあらゆるところで使っていたから竹が枯れたらすごく困ったはず。なので、前回の1908年の記録では、肥料を入れたりすごく手入れしてみんな一生懸命再生のために頑張ったという記録が残っているそうです。
だから再生が早かったらしいです。
それを聞いて私は少し心配になりました。前回の開花はみんな一生懸命復活に努力していたからハチクが減ったりすることはきっとなかったけれど、今回は竹に興味のある人なんか本当にわずかで、そもそも放置されている竹林なので、花が咲いてもそのままにされる竹林がほとんどだろうから、この開花でハチクが減ってしまうのだろうか。と。
真竹が前回開花したのは、ちょうど竹が必要なくなった頃で、やっぱり開花してもそのままになっていた竹林が多かったと思われるけれど、それで真竹が減ったのかと言うと、それは調べていないのでわからないそう。そもそも日本にどれくらい竹があるのかというのもわかっていないらしい。
竹って、分かっていないことがけっこうあるんだなあというのも驚きでした。
木は年輪で年代を測定することができるけれど、竹は一本一本は何十年かで枯れるし、地下茎も新陳代謝しているしで、竹林自体がどれくらい生きているのかとか、分からないんだそうです。
竹がいかに有用かというのを竹細工を習うことを通して知ったので、ハチクがなくなってしまうんじゃないか、この美しい竹林の風景がなくなってしまったら大きな損失だ…と実はけっこう真剣に心配していたのですが、とはいえ、日本に竹があるのもそもそも人間が持ち込んだものでそれ以前はなかったわけで、そもそも自然なものではなく。
人の手がないと復活できない植物なんてのも本来ないはずなので、放っていおいて枯れるならそれも自然の摂理だし、実は放置しても自力で復活するかもしれないし(実際今回人の手を入れるのと、入れないので復活にどれくらい差が出るのかを観察するそうです。)
ま、なるようになるか。と納得もしたのでした。
でもやっぱり里山原風景のような竹林は残っていてほしいので、今通っているハチク林の復活のための整備は、これからもお手伝いしたいな〜と思ったのでした。